大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)267号 判決

一 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取消すべき事由の存否について判断する。

原告は、審決が、引用例の八四頁に「分割金蓋を、樹木の周囲に設ける分割金蓋とほぼ相似形の縁石及び根囲石の内側に嵌合係止させ、この分割金蓋を樹木を植えた仕上り地面よりも上方に位置するようにした樹木の保護装置」が記載されていると認定したのは誤りであると主張する。

成立に争いのない甲第三号証の二(引用例)、同号証の三(引用例八四頁の及びの拡大図)、同乙第一号証の一、二、第四号証の一ないし四、第五号証(乙第四号証の三の八一頁のA―A断面図を拡大したもの)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

引用例は、昭和二七年に財団法人東京市政調査会から刊行された井下清著「街路樹」を改訂して、昭和三二年六月に全国市長会から井下清著「街路並木」として刊行されたものであること、昭和二七年の前記「街路樹」の八〇頁と八一頁には、引用例の八三頁と八四頁と同じ図面(別紙図面(二)、(三)参照)や記載があるところ、引用例の八三頁及び前記「街路樹」の八〇頁下段の「図版8」の欄の説明には、「樹木植栽位置根囲石の上に鉄蓋をかけ土の露出と踏固められることを防ぐ。」との記載があり、この記載からみても、「縁石もしくは根囲石の上に鉄蓋をかけること」は、この種考案の構成としては、本件考案の出願前に普通に行われていたことであつたことが窺われること、また、引用例の八四頁ののA―A断面図の「仕上リ地面」の説明には、「金蓋ト接触セザル様〇・〇八米ノ空間ヲ置ク」との記載があることが認められる。

引用例に示された右の事実を参酌して、特にその八四頁ののA―A断面図をみると、金蓋は、縁石と根囲石の内側上部に形成された段部に嵌合係止されているものとみるに十分である。

この点、原告は、引用例の八四頁のの平面図においては、金蓋は、縁石と根囲石の段部に嵌合係止されておらず、むしろ、直接地面上に置かれているものであると主張し、また、のA―A断面図で地面を表わす線が傾斜してひかれ、しかも、金蓋の上部を指して「仕上リ地面」と矢印表示しているともみえることなどを根拠に、図面の不正確さを指摘して、引用例八四頁の図面のものにおいては、分割金蓋は縁石及び根囲石の内側に嵌合係止させられ、これによつて、この分割金蓋を樹木を植えた仕上り地面よりも上方に位置するようにしたものではない旨主張する。

まず、引用例の八四頁の平面図には、の平面片側図にみられるような形状の金蓋が左半分に載置されたごとく略図的に示され、右半分には、金蓋が載置されていない状態が示されている。したがつて、の平面図の前記右半分にみられる実線は、根囲石と縁石のみを図示したものであり、その内側を示す線とこれに沿う平行な線とで示されるほぼコ字状の部分は、根囲石と縁石の内側上部に形成された金蓋を嵌合係止するための段部を表わしたものと解するのが相当である。そして、の平面図の左半分においては、段部に金蓋が嵌合係止されているところから、根囲石と縁石の内側上部に形成された段部が金蓋の下に隠れているので、これを点線で表わしているものと解される。また、前認定のごとく、「仕上リ地面」と金蓋との間には空間があると説明されていることからしても、原告が主張するように金蓋が直接地面上に置かれているとみることはできない。

更に、のA―A断面図においては、原告指摘のごとく、地面を表わす線が傾斜しているようにみえるが、歩道は通常排水のため傾斜させてあり、右図においても、「街渠」の方に排水するように歩道側が傾斜し、その傾斜に沿つて金蓋も傾斜して置かれていることから、相対的に地面を表わす線が傾斜しているようにみえるのである。また、「仕上リ地面」を示す矢印の先端は、金蓋を蓋として用いる趣旨からしても、金蓋の下にある前記の傾斜したごとく示された地面を表わす線を指しているものとみるべきである。

したがつて、これらの点についての原告の主張は、いずれも採ることができない。

以上のとおり、引用例の八四頁のの平面図及びA―A断面図より、分割金蓋が根囲石及び縁石の内側上部に形成された段部に嵌合係止された構成が理解できるから、引用例の八四頁に「二つの角をカツトした方形の中心部に孔を設けその両側に切欠部を設けた分割金蓋を、樹木の周囲に設ける分割金蓋とほぼ相似形の縁石及び根囲石の内側に嵌合係止させ、この分割金蓋を樹木を植えた仕上り地面よりも上方に位置するようにした樹木の保護装置」が記載されているとした審決の認定は当を得たものであり、この点に、原告主張のような誤りはない。

更に、引用例の八三頁に審決認定のような構成の分割鉄蓋が示されている(別紙図面(二)参照)ことは、明らかであるから、結局、引用例には、樹木の周囲に内側を円形とした縁石及び根囲石を配置し、その縁石及び根囲石内部に透模様を有しかつ中心部に樹木を通す孔を設けた分割鉄蓋を縁石及び根囲石の内側に形成された段部に嵌合係止するとともに、前記分割鉄蓋の両側に支柱もしくは控木挿通用切欠部を設けた樹木の保護装置が示されているというべきである。

そして、支柱もしくは控木挿通用切欠部を、本件考案のごとく、この種分割保護網の一方のみに設けるか、引用例にみられるごとく両方に設けるかは、単なる設計の問題に過ぎないといいうべきことである。

したがつて、審決が、本件考案を、その出願前に頒布された引用例に記載された事項と同一であるとし、実用新案法第三条第一項第三号の規定に違反して登録されたものであるとしたのは、正当であり、審決にはこれを取消すべき違法の点はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。

1 特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「樹木の保護装置」とする実用新案登録第一〇八四七二〇号考案(昭和四五年一二月三〇日出願、昭和五〇年六月一三日設定登録)(以下、「本件考案」という。)の実用新案権者であるところ、被告は、昭和五三年二月一五日、特許庁に対し、本件実用新案登録の無効審判を請求し、同庁昭和五三年審判第二〇八二号事件として審理されたが、昭和五五年七月一八日、「登録第一〇八四七二〇号実用新案の登録を無効とする。」との審決がされ、その謄本は同年八月四日原告に送達された。

2 本件考案の要旨

樹木の周囲に内側を円形とした縁石を配置し、その縁石内部に透模様を有しかつ中心部に樹木を通す孔を設けた分割保護網を嵌合するとともに、前記分割保護網の中の一つの両側に支柱挿通用切欠部を設けたことを特徴とする樹木の保護装置(別紙図面(一)参照)。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

図面(一)

<省略>

図面(二)

<省略>

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